「ある人」の心に残った本の紹介です。
読み聞かせの本選びの参考にしてください。同じ著者の過去の作品も案内しています。
初回は上皇后陛下美智子様です。
美智子様がまだ皇后陛下でいらした1998年、インドのニューデリーで開催された国際児童図書評議会(
実を言うと当時私は知らなかったのですが、その後「読み聞かせ」に携わることで絵本関係の情報に目が行き、また愛知県民になったことで新美南吉さんを身近に感じるようにもなっていたので、美智子様のエピソードに出逢うのも時間の問題だったのでしょう。
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美智子様のお言葉(一部)
《前略》
まだ小さな子供であった時に,一匹のでんでん虫の話を聞かせてもらったことがありました。不確かな記憶ですので,今,恐らくはそのお話の元はこれではないかと思われる,新美南吉の「でんでんむしのかなしみ」にそってお話いたします。そのでんでん虫は,ある日突然,自分の背中の殻に,悲しみが一杯つまっていることに気付き,友達を訪(たず)ね,もう生きていけないのではないか,と自分の背負っている不幸を話します。友達のでんでん虫は,それはあなただけではない,私の背中の殻にも,悲しみは一杯つまっている,と答えます。小さなでんでん虫は,別の友達,又別の友達と訪ねて行き,同じことを話すのですが,どの友達からも返って来る答は同じでした。そして,でんでん虫はやっと,悲しみは誰でも持っているのだ,ということに気付きます。自分だけではないのだ。私は,私の悲しみをこらえていかなければならない。この話は,このでんでん虫が,もうなげくのをやめたところで終っています。
あの頃,私は幾つくらいだったのでしょう。母や,母の父である祖父,叔父や叔母たちが本を読んだりお話をしてくれたのは,私が小学校の2年くらいまででしたから,4歳から7歳くらいまでの間であったと思います。その頃,私はまだ大きな悲しみというものを知りませんでした。だからでしょう。最後になげくのをやめた,と知った時,簡単にああよかった,と思いました。それだけのことで,特にこのことにつき,じっと思いをめぐらせたということでもなかったのです。
しかし,この話は,その後何度となく,思いがけない時に私の記憶に甦って来ました。殻一杯になる程の悲しみということと,ある日突然そのことに気付き,もう生きていけないと思ったでんでん虫の不安とが,私の記憶に刻みこまれていたのでしょう。少し大きくなると,はじめて聞いた時のように,「ああよかった」だけでは済まされなくなりました。生きていくということは,楽なことではないのだという,何とはない不安を感じることもありました。それでも,私は,この話が決して嫌いではありませんでした。
《中略》
どうかこれからも,これまでと同じく,本が子供の大切な友となり,助けとなることを信じ,子供達と本とを結ぶIBBYの大切な仕事をお続け下さい。
- 子供達が,自分の中に,しっかりとした根を持つために
- 子供達が,喜びと想像の強い翼を持つために
- 子供達が,痛みを伴う愛を知るために
そして,子供達が人生の複雑さに耐え,それぞれに与えられた人生を受け入れて生き, やがて一人一人,私共全てのふるさとであるこの地球で,平和の道具となっていくために。
引用元:『宮内庁』
大会のテーマである「子供の本を通しての平和 ~子供時代の読書の思い出~」について、美智子様の想いが述べられているので、ぜひ全文を読んでいただけたらと思います。
『でんでんむしのかなしみ』
作: 新美南吉
絵: かみやしん
出版社: 大日本図書
発行日: 1997年07月

絵: 井上ゆかり
出版社: にっけん教育出版社
発行日: 2005年05月

絵: 鈴木靖将
出版社: 新樹社
発行日: 2012年02月

絵: 野見山暁治
出版社: 星の環会
発行日: 2016年04月01日

出版社からの内容紹介(星の環会版)
新美南吉の名作「でんでんむしのかなしみ」をダイナミックに描いた絵本。絵画のように鑑賞しながらイ メージを膨らませることで、より深く主人公の気持ちを理解し感じることができます。日本画の巨匠 野見山暁治によって生まれ変わった新たな新美南吉ワールドへ!
引用元:『絵本ナビ』
著者(新美南吉さん)の他の作品
関連リンク
- 第26回IBBYニューデリー大会基調講演:http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/ibby/koen-h10sk-newdelhi.html
- 新美南吉記念館:http://www.nankichi.gr.jp/index.html
- 美智子様が退位されてお読みになりたい本:「ジーヴス(ジーヴズとも)」シリーズ!

美智子様のお言葉(一部)
公務を離れたら何かすることを考えているかとこの頃よく尋ねられるのですが、これまでにいつか読みたいと思って求めたまま、手つかずになっていた本を、これからは1冊ずつ時間をかけ読めるのではないかと楽しみにしています。
読み出すとつい夢中になるため、これまで出来るだけ遠ざけていた探偵小説も、もう安心して手許に置けます。
ジーヴスも2、3冊待機しています。
引用元:2018年10月20日 皇后陛下お誕生日のご回答文書より
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